今私たちがどこにいるか。ごく簡単な現状認識についてnodej001のメモです。ノード連合のツイッターアカウントでのポストを補足しながら順に並べたたものです。硬直的で紋切型の認識があったり、見落としも多くあると思います。皆さんの批判を歓迎します。
私たちは、10年以上続いていた不況、かつアジア経済の興隆と円高に直面する中で、2011年の3月、未曾有の東日本大震災と巨大津波、さらにチェルノブイリを超える福島原発事故に見舞われた。
混乱の時期が1年以上続いたが、やがて首都圏を中心に反原発運動が自然発生的に生まれ、そのうねりは地方へも波及していった。そして2012年の衆議院選の前には、不十分かつ遅延する震災対策や被曝対策、懲りずに原発再稼働に動く自民党や国家官僚、原子力村に対する人々の怒りが大きく盛り上がった。
しかし、この選挙で自民党は過半数を制する圧倒的勝利をおさめ、続く今年の参議院選挙でも同様の結果となった。人びとの不安や怒りは、そのまま反政府に向かわず、逆の方向へ、あきらかに過酷な現実から目を背け、とりあえずの安心感と保守化に向かったのである。
大震災と原発事故をめぐる政府と国家官僚、大企業の対応は、戦後体制の矛盾を露呈し、混乱し(眼前の大震災と被曝に対する抜本対策や原発廃炉政策を実現できたはずだけでなく)本来ならば、人びとの下からの力で、その矛盾を改革の方向に転換するチャンスでもあった。しかし少なくとも選挙で表現された大多数のひとびとの意志は、残念ながら改革ではなく、過去の安定を幻想的に向ったのであった。
しかし、選挙が人びとの意志をそのまま直接的に反映しているわけではない。衆議院の投票率は戦後最低の59%、今年の参議院選は戦後三番目に低い52%であった。40%の人たち、つまりざっくり言って4,000万以上の人びとが棄権しているのだ。
また先の参議院選では、明確に反原発を旗印としてほとんど個人として東京地方区でたたかった山本太郎氏が大方の予想を超えて当選し、おなじく緑の党から出馬した三宅洋平氏も落選したものの善戦した。また自公独走にブレーキを期待されて共産党も票を伸ばした。
民主党をはじめ、ほとんどの野党が軒並み凋落する中で、これらの結果は人びとの抵抗のしるしとしてかすかな希望でもある。
政党、宗教、同業組合、労働組合、地域組織、あるいは企業などなんらかの形で組織された人びとや、政治や社会の動きに自覚的な人びとの中でたたかい、活動することはもちろん必要である。しかし同時に私たちがもっと眼を注ぎ、その生活の現場に密着する必要があるのは、もの言わぬ棄権した4,000万の人びとだろう。
選挙を通じて構成されている議会制民主主義は、この物いわぬ無名の人びとを排除したところで、つまり半数の国民で成り立っているものだ。だから、これらの人びとが集合的に動けば政治は大きく変わるだろう。
実際にも、官邸前で粘り強く続けられてきた反原発デモと、その地方への波及こそが、これまで全国の原発の再稼働の動きに大きなブレーキをかけてきた。また放射能瓦礫処理に身体をはって抵抗してきた全国の人びとのたたかいがその野放図な拡散の歯止めとなってきた。
また漠然たる生活不安をスケープゴートをたたくことで擬似的に解消しようとするレイシスト集団=在特会などの動きに対しても、人びとは現場で対峙し、たたかい、その共感の輪が広がる中で、今やレイシストは思うように動けなくなっている。ここでも街頭現場での対抗運動が現実を変えている。
たしかに多くの人びとがたとえ一時的であってもかってそうであったような経済的安定の復活や(アベノミクス)、強い国家への願望を抱き(憲法改正や中国や韓国への排外主義)、一部の人びとはファシズムに惹かれてはじめていると言えるだろう。しかし国民に大きな亀裂が生まれるのはむしろこれからである。
この「帝国化」やファシズムへの動きに抵抗する人びとのたたかいもこれからより活発になっていくだろう。はたしてどちらの動きが他を制し、主流となっていくかはこれからのたたかいにかかっている。
とはいえ、帝国化と反帝国化、反ファシズムのたたかいは決して単純なものにはならないだろう。現在、帝国化をめざす勢力の内部にいる人たちも反乱を起こし、その隊列が大きく乱れることも起こりうるし、現在の野党勢力も左右に離合集散していくだろう。また、反帝国に結集する陣営も主導権争いで分裂したり、ネット上のネットワークを含め、予想もしないかたちで新しい動きも生まれてくるに違いない。
たたかい方も多様になるだろう。帝国化をめざす陣営の権力配置を内部から変化させ、つき崩していく場合もあるし、さまざまなレベルで地方から中央に反撃するたたかいや、企業で企業内組合との対決もあるだろうし、あるいは街頭でのたたかいも、さらには海外の反帝国化の動きと提携する活動も起ってくるだろう。
それぞれのたたかいの領域がもつ固有の条件やルールに従いながら、同時に、他の領域のたたかいとの共通項を見つけ出し、ともに協力しあうネットワークを粘り強く作り上げて行くことが課題になるだろう。
そして私たちもこのネットワークの一結節点(ノード)として活動していきたい。