メキシコ南部の山岳地帯で、「自治、自衛」を掲げ、政府とたたかい続けているザパティスタ民族解放戦線(EZLN)は、ローカルな課題に取り組むだけでなく真自由主義のグローバリズムへの抵抗も訴えることによって、また武装しながらも武力を唯一の解決策とせず、ネットワークの力で権力を包囲することに注力していることによって、世界の社会運動に大きな影響を与えてきている。

私自身はまだザパティスタのたたかいを充分に学べていないので彼らのたたかいについてこれ以上言及する資格はない。だが、先日、カナダのメディアが撮影したザパティスタの活動とリーダーであるマルコス副司令官の短いインタビューのビデオを見て、とくにマルコスの語りに感銘を受けたので、ここで紹介しておきたい。

私が読んだ限りでのEZLNの宣言(たたかいの節目で幾つも出されている)は、これまでのゲリラの作風と大きく異なり、まるで一編の物語、あるいは叙事詩のようなものであって驚かされたが、果たしてそれらをマルコスが単独で起草したのかどうかはもちろん定かではないのだが、ビデオでの彼の語りを聞くと、ほとんど詩と言っていいものであり、彼の発想が宣言に影響を与えていることは間違いないと感じる。あるいは、彼の資質を無視できないとしても、むしろたたかいに立ち上がったメキシコ先住民の神話や記憶がマルコスを霊媒として語っていると理解すべきかも知れない。

マルコスへのインタビューは後半の10分弱で、都会育ちの自分がチアパスに来た時のとまどいを語るところから始まり、やがて人びとのたたかいと彼の死生観 が語られる。もちろんマルコスはスペイン語で話していて、英語のテロップが流れるのだが、それを翻訳した。マルコスの画像の下にビデオのリンクを貼っておくのでぜひ全編を見ていただきたい。ここでのマルコスの語りは、およそ人びとの生死がかかる社会運動がどこに依拠しなければならないかを問わず語りに示唆するものだと思う。