この記事を書いたのは2013年であるが、その後、アメリカによるアサンジ氏の訴追、氏の亡命があり、さらに氏がロシアと協力関係にあるのではないかとの疑念が広がった。従ってここで書いた氏の試みが現在も続けられているかどうかは保留しなければならない。だが氏の初発の意図は、現在もなお有効であり、誰かに引き継がれるべきものであると考えるし、保留つきで再録しておく

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ジュリアン・アサンジが2006年末に創立したウィキリークス(WikiLeaks)は、非営利のメディアであり、主として内部告発者から提供を受けたイラク戦争におけるアメリカ軍民間人殺傷動画、同軍機密文書や、アメリカ国防省アフガニスタン関係機密文書、アメリカ外交文書公電などの提供を公開し、アメリカをはじめ世界の国家に戦慄を与えた。

ウィキリークスの存在によって、いつ自国から国家機密が流出するか分からなくなったからである。国家機関の内部に存在する告発者は見えない。とりわけそれが単独者である場合には、事前の予防はほとんど不可能に近い。彼/彼女が密かに決意すると、その内部で告発機械は音をたてずに動き始める。

しかしウィキリークスが対象にしているのは国家だけではない。企業もそうであり危機に陥ったアイルランドでは銀行の実体を暴露し、アメリカではサブプライムローン関係でバンクオブアメリカなどの銀行の情報も入手したと宣言している。

彼らのミッションは「隠蔽され、検閲された不正義を人びとの前に暴きだすこと」に置かれていて、それが誰によって、どのような組織によって行われるかは問われない。

ウィキリークスが実際には何をターゲットとしているかがエブサイトに書かれている。カルトが挙げられているのはアノニマスと共通している。

– War, killings, torture and detention(戦争、殺戮、拷問や拘禁)
– Government, trade and corporate transparency(国家、取引、企業の透明性)
– Suppression of free speech and a free press(言論、メディアの自由に対する抑圧)
– Diplomacy, spying and (counter-)intelligence(外交、スパイ、諜報機関)
– Ecology, climate, nature and sciences(エコロジー、気候、自然、科学)
– Corruption, finance, taxes, trading(腐敗、財政、税、貿易)
– Censorship technology and internet filtering(検閲技術、ネットのフィルタリング)
– Cults and other religious organizations(カルト、宗教組織)
– Abuse, violence, violation(虐待、暴力、侵害)

ターゲットになっている領域が多いことに驚くが、これは現時点でまだ未公開にとどめているリーク情報がいかに多いかを示唆するものだ。今後さらに情報は増えてだろう。

ウィキリークスが現れたことで、潜在していた内部告発者たちの活動が一挙に浮上してきた結果として考えるべきだろう。それだけウィキリークは彼らに勇気を与えるものだったと言える。

もともと内部告発者は孤独なたたかいを強いられる。だが、ウィキリークがリーク情報を全世界に向けて公開する場(プラットフォーム)を提供したことで、内部告発者の単独者性をむしろ利点に変えつつある。内部告発では組織よりも、個人がたたかいやすいのだ。

ウィキリークのミッションが「権力を持つ者たちの不正義を暴露する」という単純なものであること(だからこそ人びとの共感を呼ぶ)、内部告発者たちの単独者性が有利に働きつつあることに注目したい。

日本でも「不正義が隠蔽されている」あらゆる領域で告発者(ノードたち)が出てくることを期待したいし、応援していきたい。

2013