以下、=====で挟まれた部分は、上記のタイトルで今月8月10日に書きはじめていたものである。れいわ新選組(以下れいわ)が現在直面している課題を明らかにし、それに正面から取り組まなければ、早晩ジリ貧になるだろうという危機感から、書き始めたのだが、一昨日の12日夜、youtube番組『れいわ地下二階:B2サンデー』という番組で、ほぼ2時間にわたって代表山本太郎氏が事前に寄せられた質問に答えるというかたちで、私が書こうとしていたことの多くに触れていた。そこでその応答を踏まえて書く必要が出てきたので、いったん====で区切りを入れ、その後に追記する形にしたい。
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これまで私は、一般党員を募集せず、地方組織を持たず、代表山本太郎氏の独裁を許容する規約などを特徴とするれいわ新選組(以下れいわ)の組織のあり方、運営について、改善克服すべき点があるとしても、それはれいわが既存の政党に対し「党ならざる党」という新しい試みで対抗しようとしているところから派生しているものであり、基本的に肯定的にとらえるべきだと考えてきた。これについては批判すべき点を含め以下のnote過去記事で触れているので参照されたい
「研究猫ともさんの組織論」(19/12/25)
「安冨歩氏の組織論と推測訂正」(19/12/25)
「改めてれいわ新選組の規約を考える」(20/12/25)
「れいわ新選組の候補者選び」(20/01/23)
「れいわ組織論の難題ー陰謀論、立憲との対立への対処」(20/02/03)
「れいわ新選組が抱える難題に対する暫定的な解答」(20/02/06)
本年7月3日に発生した党員大西つねき氏の「生命の選別」肯定発言については、支持者としての立場から、直後に「優生思想にもとづく発言であり、党として許容すべきでなく何らかの処分を行うべきだ」と主張し、れいわが17日に開催した総会で氏の除籍を決定したことも妥当な処分であると受け止めた。大西発言の問題点と経過については、以下のnote記事を参照されたい。
「大西つねき発言 -批判と経過-」(20/07/13)
しかし大西氏除籍をめぐってはれいわの党員内部でも、また支持者の間でも意見が割れた。その後、いったんは総会で除籍に賛同した前参議院選候補者で党員の野原善行氏が「はやり組織の運営や規約に問題がある」と党批判をツイートし、その削除を求めた党事務局と対立、7月25日に離党届けを出すということが起こった。また同じく前参議院選候補者であった安冨歩氏もツイッター上で抽象的な形でれいわを批判している。大西氏除籍処分に反対する支持者の多くが優生思想の危険性に無自覚であることに加え、野原氏離党後には、党批判がエスカレートし、かって山本太郎氏の選挙を手伝った斉藤まさし氏の「市民の党」が「党を牛耳っている」とか、いち早く大西発言批判を展開した衆議院選候補大石あきこ氏に対し、「なぜ党内で議論する前に大西氏のyoutube動画をツイッター上で晒したのか、彼女は極左の関西生コン労組の支援を受けている」など、SNS上で反共陰謀論を煽る人たちも出てくるまでになった。これに対してはその背景を含め以下のnote記事で批判しておいた。
「大西つねき氏擁護論を批判する」(20/07/18)
「ルサンチマンのゆくえ」(20/07/19)
しかし大西発言をめぐってれいわを批判したり、距離を置くようになっている支持者がすべて優生思想に無自覚だったり反共陰謀論に染まっているわけではない。むしろ優生思想の危険性を理解し、大西氏処分も止むをえないとした上で、処分決定にいたる党の手続きや組織運営のあり方を問題にしている人たちが大多数ではないかと感じる。また大西発言、除籍処分、野原氏離党など一連の出来事で党が大揺れに揺れていても批判を公にせず、なおれいわを支持し続けている人たちの胸中にも同様の批判や不満が渦巻いていると考えるべきだろう。そしてその批判や不満には理由が存在するとすれば、れいわは、大西氏処分、野原氏離党届受理だけで現在の混乱を収拾することはできないし、党として何の対策も打たず現状の混乱を放置し続ければ、支持者のれいわ離れが進み、ジリ貧に陥るだろう。残念ながら、8月11日現在まで党からは何のメッセージも出されていない。
そこでれいわが何を解決しなければならないのかを支持者として指摘したいと思う。では、支持者の多くは党の何を批判しているのか。ランダムに取り上げれば、おおむね次の諸点に絞ることができるだろう。
● 支持者の声を党に届ける回路が存在していない
● 地方組織がないに等しく、支持活動が困難
● 党の活動、組織運営が不透明で見えない(ブラックボックス化)
● 党事務局が窓口らしいが、機能しておらず権限も不明
● 党事務所に電話は通じず、メールの返信もない
● 党規約上も実際も代表山本太郎氏の独裁状態であり党の今後を展望できない
● 党や支持者の混乱に、党からは何のメッセージも出されていない
● このままでは早晩ボランティア活動も限界にぶつかる
● 寄付金の使途を透明にすべきだ
従って、これらの批判、不満を解決していくためには、一つのモデルに過ぎないが、たとえば以下に挙げるような組織改革をやらなければならないだろう。
● 一般党員制度を設ける
● 一般党員中心に地方組織を設ける
● 党員の権利と義務、地方組織の権限を定める
● 党は地方組織の連合体とし、最高機関を連合体の総会とする
● 党代表と役員の選出は、総会において党員の投票で決定する
● 代表と役員の任期は2年とし、再選は妨げない
● 党の執行機関は代表を含む役員会とする
● 事務局は党役員の下に設置し、専従者選定と処遇は役員全員で決定する
● ボランティアの党活動への参加制度を設ける
● 党と支持者、国民をむすぶSNSなどのメディア対策を強化する
● 寄付金等の使途を明らかにする『政治資金収支報告書』へのアクセス明示
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では『れいわ地下二階:B2サンデー』で代表山本太郎はどうだったか。結論を言えば、れいわに対する批判から決して逃げたり、誤魔化したりせず、上にあげた課題にとどまらず、うわさや流言のたぐいまであえて取り上げ、現段階で可能な範囲で誠実に答えようとしていたと私は考える。その結果、この番組の山本発言によって、支持者が抱えてきた疑問や批判の多くは(完全ではないとしても)解消に向かうのではないかと思う。
山本氏が課題にどう答えたか、あるいは答えようとしているか、番組の発言を(少し細かい部分を含めて)まとめると次のようになる(順不同)。
◉ 現在の規約がきわめて不十分なことは自覚しており、8月末頃までに第一段の改正、次期衆議院選後に第二段の改正を計画している。改正内容は次を含む
(1) 一般党員制度の導入検討
(2)代表独裁制にならない組織上の仕組みを検討
(3)党の執行機関と総会の関係を明確化
◉ 地方議員が重要なことは確かにその通りだが、国会である程度の議席を確保することを現在れいわの最優先課題とせざるをえない。地方選挙をやれる体力は現在のれいわにはない(無所属の現職議員でれいわの政策を支持していただける方に推薦を出すことはやっていく)
◉ 国会で法案提出や与党への申し入れなどにれいわが党として参加していないのはなぜかという疑問が出されているが、すべて衆議院が中心となった活動で、参議院にしか議席がないれいわは出ていけないのが実態
◉ 支持者からの声に十分対応できていない、また党としての発信が弱いことは自覚しており、以下に取り組みたい
(1)『れいわ地下二階:B2サンデー』の定期開催
(2)メルマガ発行とQ&Aコーナー設置
(3)コロナで困難であるがゲリラ街宣を再開
(4) youtubeなどで立候補予定者とコラボ番組作成、発信
(4)は立候補予定者の企画によるので、企画が出されれば積極的に進めたい。なお大阪の立候補予定者である大石あきこ氏の番組に出たのは、氏から企画が上がったためで特別に優遇しているわけではない
◉ 電話が繋がらない、メールに返事がないとのクレームが多いことは承知しているし改善すべきだが、限られた人員で有効な対策は打てないのが実情(電話で窓口担当者を増やしコールセンター的な機能までは果たせない)。緊急を要するSOS対応を最優先でやっていている。メールは「確かに受理しました」旨のサンキューメールを返信することは7月頃から始めている
◉ 資金が足りず、寄付を呼びかけておきながら、赤坂の本部事務所の家賃は高すぎるのではないかとのご批判を受けている。赤坂を選定したのは、衆議院選挙が間近という情勢判断の下で、家賃、アクセス、宣伝効果など複数の候補地を総合的に考慮した結果だったが、衆議院選が来年に伸びるのであれば移転も検討しなければならないと考えている
◉ れいわの事務局を担当してもらっている沖長氏が権限以上のことをやっているのではないかというご批判があるが、重要な案件を事務局長が代表を飛び越えて単独で決めることはない
◉ 斉藤まさし氏や市民の党にれいわが操られているなどのうわさが飛び交っているが、すべて根拠を欠いたデマである。斉藤氏とは2012年の衆議院選出馬時に選挙を手伝ってもらった関係で、今でも年に数回会っているのは確かだが、氏は現在公民権停止の処分を受けており、選挙にはいっさい関われない立場。事務局担当の沖長氏もかって「市民の党」で斉藤氏と一緒に活動していたと聞いたが、現在もかっても「市民の党」は組織実態のある政党ではなく個人中心とのこと
◉ 大西氏処分をめぐって「れいわは極左に偏向している」とのご批判があるが、何をもって極左と言われているのか理解できない。大西氏の処分も、党の「綱領」で掲げている「障害や難病を抱えていても、将来に不安を抱えることなく暮らせる社会を作る」ことに大西氏が背反する発言を公におこなったことが理由であり、イデオロギーを理由にするものではない
◉ れいわがミニ政党のままで推移し、国政に力を発揮できない状態が続く場合、組織路線の変更があるかというお尋ねがあるが、れいわもあくまで国民の生活を向上させるための手段であり、その目的が困難になったり、あるは他の方法でより早く実現できるのであれば組織を変更したりすることには柔軟でありたいと考えている(れいわを絶対化しない)
◉ 寄付の使途についても疑念を表明される方がおられるが、寄付を含む党の活動資金の内訳は、すべて『政治資金収支報告書』に記載し、届け出をする必要があり、翌年11月、総務省ホームページで公開されるのでチェックしていただけば明確になると考える。寄付の概要は毎月党のオフィシャルページでの公開を考えたい
◉ 大西氏の処分以降も、れいわの理念にいささかの揺らぎはなく、今回お伝えした改善を含め、今後もその実現に向けて努力していきたい。引き続き皆さんのご支援をお願いしたい
弁解が多いとか、掲げた課題をどれだけ実現できるのか未知数だという意見もあるかと思う。しかし、支持者の批判や不満が確実に山本氏には届いていて(批判の大部分には答えている)、氏やれいわがそれらを受け止めた上で改善のための努力を始めていることは明らかになったと思う。従って、これまでれいわを支えてきた支持者がここでれいわを見切るのは早計だと私は考える。
れいわが党として発足して1年半、国会議員が二人にとどまる弱小政党であるのは間違いないし、はじめて誕生した左派ポピュリズムの党(あるいは困窮する国民に真剣に手を差し伸べる党)として今後もさまざまな問題に直面していくのも確かだろう。しかし発展していく芽はまだ残っているし、ここで立ち直る力を持っている。支持者として、れいわが間違った選択をすれば批判して軌道修正させる観点を忘れずに、今後も積極的に支えていく価値は十分にあると私は考える。
2020/08/14